占いの裏話(18)

暦の話 4回シリーズ  -- その1--

暦の体裁、年中行事


毎年、市販される暦はベストセラーとして新聞の話題に数え上げられることはないが、実はその年の隠れたベストセラーになっている。
現代でも暦は毎日の生活の指針になっているからである。運勢暦はおびただしい数の出版社によって書かれている。
見た目は同じように印刷されているので、普通の人は気がつかないと思うが、色んな種類のものが色んな団体から市販されているのである。

しかし、それらの似て非なる運勢暦に書かれている文字や事柄には、一般の人にとって見慣れない、容易になじめない言葉が沢山ある。
然も簡単には読めない字も含めて色んな語句がギッシリと入り乱れており、いずれも出版社毎に好き勝手で、肝腎の語句を載せたり載せてなかったりさえしている。

当該記述がどのように分類、区別されているのか、どういう配列なのか、何に関連するのか等、一般人にとっては疑問だらけで理解できないはずである。それにもかかわらず、いずれにも説明が全くないか、たとえあったとしてもあいまいではっきりしていない。
分からないことが余りにも多い。
そこで今回から(4回シリーズで)日本人なら年末年始にどこかで必ず見る運勢暦についての解説をする。
(尚、このうち二十八宿については当HP裏話NO16で既に解説したので参照)


1、市販の暦の体裁
@、たいていの暦では、その表紙の裏に年齢早見表が載っている。(不思議にもこれがないのもある。)

A、次に「略歴年表」又は「・・・・年略歴」と言うのが出ている。これがわかりずらい。びっしりと言葉がつまっているが、どれが何の為に大切なのか、良いのか悪いのか、書かれている位置はどうやって決めたのか、そこに書いてある内容で全部なのか一部
なのか・・・など気をつけて見ると疑問が出てくるのだが何の説明もないのでよく分からない。(後述2参照)大方の人はここを見ないと思う。
殆どの人の関心は九星毎に書かれている、その年1年間の運勢であり特に自分に該当する九星のそれであろうからである。

B、その次には、その年の方位吉凶図が載り、続いて「・・・神」が、ときには挿絵つきで沢山出てくる。
不穏当な名称が付いているばかりか、そのコメントには見慣れない言葉が並べてあり、読んでいるとだんだん不安になってくる。
暦の値段が高くなるほど、その数も多くなり、書き方もしつこくなる。
碌でもないことが書いてあるので感じが悪い。普通の人は、こんなものは無視して良い。
(但し方位を研究する者、占いの「専門家」と自称する者にとっては、これらは避けては通れない事項である。
一体どういう理屈でこうなるのか、毎年どのように配当されているのか、・・・程度の決まり事は知っておかねばならない。)

C、その次にようやく各月毎、12ヶ月の暦の表が出てくる。次のような内容になっている。毎月(月盤)と毎日(日盤)にわかれる。
月盤には・・・、
月(新月)の名称、陰暦による異称と大小の区別、該当する二十八宿の名称、その月の期間(当該節気の期間日付)、その月の十干、十二支、九星、その月の暗剣殺の方角、旧暦の該当月、農作業の指針、月の満ち欠け、歳時記、東京及びその他の都市の日の出日の入りが書いてある。
日盤には(日割表を縦に見ると)・・・、
日付(新暦の日付)、曜日(七曜)、十干、十二支、九星、年中行事(国民の祝日休日、雑節、選日、二十四節気、各地の行事、祭り)旧暦の日付、六曜、十二直(中段)、二十八宿、下段、日の出日の入り、月の出月の入り、満潮干潮、注が書いてある。
月盤、日盤とも、その暦の販売値段により、これらの全部又は一部について記述があったりなかったり雑多で、各社毎にバラバラである。
このCが暦の本体なのであるが、一般の人はこの次に出て来る「九星各人別運勢占い」に最も興味があるのは、前述の通りである。
各出版社ともこの両項目に同じボリュームのページを費やしているのはその為である。

D、以上のほかに、値段によっては手相、人相、家相、姓名学、儀式の作法などについての説明が付録として続く。
調べてみると、これら付録の内容は、毎年全く変わらない。この事でページ数を増やして高値が付くのなら、その部分への出費は毎年、無駄というものである。

2、年齢早見表と本体との間、又は九星別運勢の後には、初めのページに出ている略歴年表の語句の解説の如きものがあり、そこには初めのページに出ていた語句と同じものが載っていたり、載っていなかったり、更にそれまでに出てない語句が好き勝手に追加されていたり・・・色々書いてあるが全く不揃いでわかりずらくなっている。(前述1A参照)
他社と差別化したい為という単純な理由だけによるものなのか、混乱していたほうがかえって有難がられるからなのか、どの出版社のものも煩雑で整理されていない。
雑節、行事、選日・・・と何の説明も分類もなく、いきなり語句が出ていたり、関連を説明ないまま語句を並べ、その意味らしいことを解説をしていたり中途半端な記述が大半で、古い記録をそっくり毎年移記したに過ぎないもののようでもある。
年中行事というタイトルを設け、そこに無秩序に語句の幾つかを並べているのもある。

3、年中行事(民俗行事)欄には季節ごとに予知される行事が書き込まれ、これが庶民の生活の心構え、季節への道標を示す役割をはたしているようである。
多くは十干、十二支、六十干支が利用され、それを根拠に記述されている。(干支などの詳細は後述、シリーズ4参照)

@、 この内、60干支の一つである次の3種については選日にリストしている暦または解説書が多い。
どの出版社でも暦の第一ページに載せてあり、しかも8種の選日(後述シリーズ2)と同列として出しているので、そのように分類されがちのようである。
しかしこの3種はそうではなく、民間信仰の類に属するものであり、選日とは異なるカテゴリーに入るものである。
甲子(きのえね)、己巳(つちのとみ)、庚申(かのえさる)がこれである。
吉凶判断は古来、十干十二支の組み合わせによって行われたため、これが民間信仰に結びついて現代に至ったケースである。
その中でこの3つが特に有名なのである。
尚、この3つの他には丙午(ひのえうま)が有名な干支である。
干支60と1年365日との組み合わせによるものであるから、いずれも年に6回廻ってくる。
これらは干支をそのまま使ったものであり迷信の最たるもので、読むと吹き出したくなる解説が載っていて面白いが、こんな事を義理堅く守っていたのでは、実は楽しいはずの人生がおっかなくて危なくて安心して生きていられなくなる。
「庶民の生活に著しい支障を来すから禁止する」といって弾圧した明治政府の態度が充分に理解できる(明治5年の改暦勅書)。
しかし今でもその信仰はかなり厚いようで、無視できない類に入ることも確かであ
る。個々の説明は省略する。
本稿(4回シリーズ)の目的は、市販の暦に出ている各項目の分類と存在位置の解説であり、個々の説明ではないからである。(以下同じ)

A 、十二支の関係では毎年の正月の催しとして「初」と名のつく日がある。
日の十二支による縁日であり、亥、子、寅、卯、巳、がそれである。
新年初のこれらの日を特に重視する民間信仰が今でも、はびこっているのである。
因みに平成17年を例に列挙すると・・・・、
1月3日初亥(相場師、芸者などの信仰がある)、1月4日初子(五穀豊穣、安泰を祈る)、1月6初寅(福徳授与の縁日)、1月7日初卯(東にある神社仏閣に参拝)、1月9日初巳(特に音楽の知恵向上を祈願)である。
(初午については当HP裏話NO19−1(雑節)参照)

B、十二支による縁日にはこの他に午、申、酉、戌もあるが、正月の対象ではない。
初午は2月3日であり、このグループではなく雑節(後述)に入れる。
また、申は初申ではなく庚申(かのえさる)にあたる日に関する。(前述)
酉は11月の酉の日(平成17年は11月9日が一の酉の日、11月21日が二の酉の日)で、商売繁盛を祈る縁日である。
戌の日は安産祈願の縁日である。
いずれもこれらの該当日は全国各地で市が立ち、正に民間行事となっている。
因みに縁日とは人間が特定の神仏と縁を結ぶことが出来る日のことを言う。
古くからの習わしである。

C、 日本人独特の信仰心から神道、仏教、土着の神に祈念する行事がある。
この日に参拝すれば特別な功徳があり、加護を得られるとされる「日付による縁日」である。
例えば毎月1日は・・・・の神、毎月15日は・・・・菩薩、毎月18日は・・・・観音の類がコレである。
全国各地に散在している。
消えてしまったところもあるらしいが、人出が多いところは逆に、徐々に益々大仕掛けになって来ていると聞く。

D、このほか代表的な年中行事、祭りは次の通りである。
1月・・・初詣、年賀、仕事始め、初荷、書き初め、七草、鏡開き、小正月。
2月・・・針供養。3月・・・雛祭り、十三参り。
4月・・・灌仏会(かんぶつえ)(花祭り)。5月・・・。6月・・・衣更え。
7月・・・。8月・・・八朔(はっさく)。9月・・・十五夜。
10月・・十三夜、亥の子祝い、十日夜(とうかんや)。11月・・七五三。
12月・・煤払い(すすはらい)、歳暮、冬至、年忘れ(忘年会)、大晦日、年越し、年越し蕎麦、除夜、除夜の鐘。

E、 地域的な行事、地方のお祭りや記念日もこれに入る。
(祇園祭、ほおずき市、各地の盆踊り、阿波踊り、酉の市、恵比寿講・・・・など、多すぎるので省略)

F、国民の祝日、休日もこれに入る(周知の通りにつき省略)。
 
 

裏話バックナンバーへ

Copyright (C) Yamazaki Motoi All Rights Reserved.
このサイトの内容の著作権はすべて著作者「山崎求易」に帰属します
無断転載禁止